次に神崎様が来店されたのは3週間後の金曜日の夕方で、新婦1人きりだった。
「仕事が終わったら来ますので、先に試着させてもらっても良いですか?」
「ええ、もちろんです」
打ち合わせスペースに通して、まずは飲み物を出して一息ついてもらうことにした。
ヒアリングを先に進めて、試着を後ろに持ってくることで新郎が間に合うかもしれないと思った。
「帰られてから、新郎様にドレスのお写真、見て頂けましたか?」
「あ、えーと、忙しくて、あまりちゃんと、話せなくて・・・」
オレンジジュースにささったストローを指で触れながら、俯き加減で歯切れの悪い答えが帰ってきた。
「あ、でも、私の好きなドレスで良いって言ってくれてるんで、大丈夫です」
「新婦様の気持ちを尊重してくださる方なんですね」
「そう、ですよね」
同意することに躊躇うような、無理矢理そう思おうとしているように感じられた。
「どうかされましたか?」
深入りはしすぎないよう、けれど伸ばされそうになった手には優しく触れる。
結婚式を前にした新郎新婦は環境の変化に加えて、準備の忙しさと金銭的な現実を日々突きつけられてナイーブになっていることが良くある。
私達はお客様が望むように寄り添ってドレス選びを進めるが、ドレス選びに何か不安な点があれば、聞かせてもらえる範囲で最大限、お客様のために誠意を尽くしたいと思う。

