フルール・マリエ



まず出迎えてくれたのは千紘のお母さんで、私の事を覚えていてくれたようで、懐かしそうに微笑んだ。

「聖ちゃんを千紘が連れてくるなんてね。驚いたわ」

千紘はお母さんに良く似ていて、つまりは相当な美人だった。

年齢を重ねているとはいえ、その美貌は隠し切れてはいない。

部屋に案内されると、もう1人似た顔の女性が立っていて「千紘の叔母です」と頭を下げた。

千紘のお母さんよりも幾分か鋭い目つきをしているのは、私を品定めするためなのかもしれない。

「千紘さんとお付き合いさせて頂いています、朝見聖です」

緊張したものの、お辞儀の角度は仕事病のようなものだから、自然な流れで腰を折る。

千紘に促されて、ダイニングテーブルに並んで座ると、私の向かい側に叔母さんが座り、お母さんはキッチンで飲み物の準備を始めた。

「朝見さんは千紘と小学校のクラスメイトだったそうですね」

「そうです」

「ご両親はご健在で?」

「はい。どちらも病気一つ無く」

「お仕事は何をされているのかしら?」

「叔母さん、会って数分で質問するには不躾な話題じゃない?」

千紘がたしなめると、叔母さんは鋭い目つきでそれを制した。

「将来を考えれば、お相手の家族のことも知っておくべきでしょう」