「凄く綺麗だ……早紀にウェディングドレスを試着したお前の写真を送ってもらったが、やっぱり本物の方がいいな。でも……」
「でも、何?」
「早くこのドレスを脱がしたい……」
あぁ、愁……そんなこと言われたら、またアドレナリンが……
悶絶しつつ、必死で気持ちを落ち着かせようとしてたら、頭上から意味不明な言葉が降ってくる。
「披露宴が終わったら、温泉に行くぞ」
「はぁ? 温泉って……まさか、あの温泉?」
「そうだ。今度こそ、お前とふたりで家族風呂に入る」
私も温泉は嫌いじゃない。むしろ好きだ。でもどうして結婚式を挙げた日にわざわざあの温泉に行かなくちゃいけないの?
その理由を聞くと、愁は「俺達はあの温泉から始まったから」とニッコリ笑う。
「紬の悲しみを癒す為、合同会社を作ってやりたいと強く思ったのも、その気持ちが恋だと気付いたのも、あの場所だ。そして何より、お前が気を失って一緒に温泉に入れなかったのが、どうも心残りでな」
前半の言葉はグッときたが、後半はちょっと微妙だ。
「そんなに私と一緒に温泉に入りたかったの?」
「当たり前だ! お前のお母さんに、紬は俺に惚れてるって散々言われた後だったからな、こっちもすっかりその気になっていたのに、いきなり気絶されて焦ったよ。
おまけに、温泉のばあさんには脈なしだと断言されるし……今でもそれがトラウマになっていて時々、あの時の夢を見る。まさに悪夢だ」
「つまり、そのトラウマを克服する為にリベンジしたいと?」
「そうだ!」と胸を張る愁が、なんだか子供みたいで可愛かった。



