愁の意味不明な怒りに戸惑い「そうだと思いますが……」と答えるのが精一杯。体を仰け反らせ次の言葉を待っていると、予想もしなかった質問が飛んできた。
「お前、初夜をなんだと思ってる?」
「しょ、初夜は……えっと、結婚したふたりが初めて迎える夜のことで……」
なんでこんな説明しているんだろうって疑問に思いつつも素直に質問に答えていたら、愁が私の言葉を遮るように怒鳴る。
「お前、その大切な初夜に他の男のと会う約束したろ?」
「はぁ? 何言ってるんですか? 私はそんな約束なんて……あぁっ!」
そうだ。思い出した。私、今夜、CEOの部屋に行く約束していたんだ。
「そ、それは、まさか愁と結婚式を挙げるなんて思ってなかったから……でも、どうして愁がそのこと知ってるの?」
CEOとの約束がバレてしまったことに焦り、しどろもどろになっている私を怖い顔で睨んでいた愁だったが、突然、豪快に吹き出し笑い出す。
えっ……何?
「バカなヤツ。紬はCEOにからかわれたんだよ」
「……はい?」
「合同会社の設立発表をするこの日に結婚式をしようと提案してくれたのはCEOだぞ。そんなCEOが俺から花嫁を奪うようなことをすると思うか?」
「でも……」
私は山辺部長の企みを話し、CEOが土壇場で愁を裏切るつもりだったのではと訴えたのだが、愁は呆れたようにため息を付く。
「初めにちゃんと説明したろ? 山辺部長を追及する証拠を集める為、CEOには山辺部長の味方になったフリをしてもらうって」
「あ、じゃあ、CEOは本当に愁の味方だったの?」



