そこにはもう、不安や恐れといったネガティブな感情は一切なく、愛されているという幸せと喜びが私の心を満たしていた。
すると、愁もそれに応えるように私の腰に手をまわし、強く唇を押し当ててくる。
暫くの間、本能の赴くまま濃厚なキスを交わしていたのだが、なかなか終わらないキスに参列者がザワ付き出し、進行を無視され怒った神父様が「私の許可なく勝手にキスをするんじゃない!」と怒鳴り出す。
お願い。もう少し……もう少しだけこのままでいさせて……
しかし私の願いは叶わず、見かねた母親と根本課長に引き離されてしまった。
そして仏頂面の神父様が「これは、神への冒涜(ぼうとく)だ!」と大げさに叫ぶ中、挙式も終わった。
――その後、一旦、控室に戻って披露宴が始まるまで女性スタッフにメイク直しをしてもらっていたのだが、興奮した気持ちが落ち着き、冷静さを取り戻すと、やっちまった感がハンパない。
あの時は嬉しさの余り周りが見えなくなっていたけれど、今思えば、さすがにあのキスはマズかったな。それに、神父様を怒らせてしまったし……バチが当たったらどうしよう……
ちょうど女性スタッフが最後の紅を引いたところで、私のヘタレメーターが完全に針を振り切り、どんより落ち込む。その時、けたたましくドアをノックする音が聞こえた。
「あ、愁……」
披露宴が始まるまで、お互いそれぞれの控室で待つと聞いていので、突然の愁の訪問に何事かと目を丸くする。
ズカズカと部屋に入ってきた愁が女性スタッフに席を外してくれと頼み、女性スタッフが控室を出て行くと、いきなり「お前は俺の妻だろ?」って強い口調で迫ってきた。



