私、本当に愁と結婚するの?
その思いは、透かし彫りを施した重厚なチャペルの扉の前に立つと更に強くなり、私のヘタレな性格が顔を覗かせる。
実はこの挙式はドッキリで、扉が開いたら誰も居ない……なんてことはないよね?
そんな壮大なドッキリを仕掛ける意味などないと分かっていても不安で足が竦む。
「あの、愁は……新郎はもう中に居るんですか?」
堪らず隣に居る若い女性スタッフに質問したのだけれど、そこに居たのはスタッフではなく、シックな紺色のロングドレスを着た母親だった。
「か、母さん、どうしてここに?」
「何言ってんの? 娘の結婚式に母親が出席しないでどうするの?」
母親は愁から結婚式を挙げると連絡を受け、昨日の内に上京して翔馬が居る早紀さんのマンションに泊まったとのこと。
「早紀ちゃんっていい娘ね。翔馬にはもったないわ」
「うん、そうだね」
私と愁の為に一生懸命動いてくれた優しい娘……うぅん、優しい妹だ。早紀さんだけじゃない。根本課長にも感謝しなきゃ。
少しだけ実感が湧いてきて瞳を潤ませていると、母親がゴソゴソとバッグの中を探り、見覚えのあるフォトフレームを取り出した。
「それ、父さんの写真……だよね?」
「そうよ。お父さんね、紬とバージンロードを歩きたかったと思うの。だから今日は三人で歩こうと思って連れて来たのよ」
当初、母親は挙式の担当者から私とバージンロードを歩くのは、身内の男性にして欲しいとお願いされていたそうだ。でも、母親はその申し出を断った。



