アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】


【山辺氏の長女と栗山氏は、中学、高校の同級生である。部活も同じテニス部に所属し、当時を知る複数の同級生の証言によると、非常に仲が良かったということです。

現在でもお互いの家を行き来しているようで、週末には山辺氏と長女、そして栗山氏によく似た人物が山辺氏所有の車で出掛けるところを近隣住民が目撃している。

よって、山辺氏と栗山氏は顔見知りだと思われる】


「えっ……栗山さんと山辺部長の娘さんが親友……?」


このふたりにそんな繋がりがあったなんて……


予想もしていたなかった事実に驚愕し、言葉もなくふたりの顔を交互に眺めていると、愁がスーツの内ポケットからもう一枚、紙を取り出して私の手に握らせた。


「これを読めば、ふたりがなぜ共謀して俺を陥れようとしたのか、その理由が分かる」


慌てて紙を広げ読んでみると、そこには、山辺部長の娘さんに関する悲しい出来事が綴られていた。


【山辺氏の長女は、中学時代にクラス全員から無視されるというイジメにあっていた。山辺氏は学校や教育委員会に掛け合い動いていたようだが、改善の兆しは見えず、長女は不登校になる。

そんな時、山辺氏の家を訊ねたのが、同じテニス部で隣のクラスの栗山氏だった。

栗山氏は長女に事情を聞くと、自分がイジメをやめさせるから学校に行こうと長女を励ました。栗山氏はその言葉通り、イジメを行っていた友人一人ひとりと話しをして根気強く説得し続けた。

一ヶ月後、栗山氏の努力の甲斐があり、長女へのイジメはなくなり、山辺氏は涙を流して栗山氏に感謝した】


そして最後に書かれていた一文が、この報告書に嘘偽がないことを証明していたんだ……