栗山さんは真っ赤に充血した目で愁を睨み、吐き捨てるように言う。
「私は、大嶋専務が次期社長だと思ってた。私だけじゃない。バイオコーポレーションの社員全員がそう思っていたはず。なのに社長の血縁ってだけで八神常務が後継者になるなんて……そんなの納得できるはずがない」
専務も自分と同じようにショックを受けていると思った栗山さんは、自分がなんとかしなくてはと思うようになる。
「きっと専務は社長になりたいと思ってる。だったらその夢を叶えてあげたい。そう思うのは当然のことでしょ?」
「……それが、栗山さん夢……」
「そうよ。夢を壊そうとしている八神常務なんて居なくなればいいって思ってたわ」
栗山さんの鬱積した気持ちが怒りに変わり、その全てが大嶋専務の立場を脅かす愁に向けられたんだ……
「……でも、どうすればいいか分からなった」
両手を強く握り俯く栗山さんの肩を抱いたのは、山辺部長だった。
「悪いのは私だ。私がいい方法があると理紗ちゃんに今回のことを持ち掛けたんだ。理紗ちゃんは私の指示に従って動いただけ。なんの罪もない」
理紗ちゃん……?
「違う! 私が渋る山辺さんに無理やりお願いしたんです。八神常務を失脚させるいい方法があったら教えて欲しいって……」
お互いを必死に庇い合うその姿に強い違和感を覚える。
「栗山さんと山辺部長の関係って、いったい……」
疑問を口にすると、さっき山辺部長が丸めて床に放り投げた紙を愁が拾い上げ、私に差し出してくる。
それはふたりの関係を調査した興信所の報告書で、栗山さんと山辺部長の関係が詳細に書かれていた。



