アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】


栗山さんの夢は、彼氏を一国一城の主にすることだったよね。栗山さんの夢と今回のことがどう関係するの?


話しが全く見えない。堪らず栗山さんの元に駆け寄り、私に言ったことは嘘だったのかと問い詰めると……


「新田さんに言ったことは嘘じゃない。私はこの世で一番大切な人を社長にしたかった……」


栗山さんはそこまで言うと唇を噛み黙り込んでしまった。そんな栗山さんに代わって話し出したのは、愁だった。


「君は、その大切な人をバイオコーポレーションの社長にしたかったんだろ?」

「えっ……ってことは、栗山さんの好きな人ってバイオコーポレーションの社員なの?」


それが誰なのか訊ねるも、栗山さんは硬く口を閉ざし教えてはくれない。すると背後から「それは、私のことだろう……」という声がする。


「え、えぇっ! 大嶋専務?」


栗山さんの好きな人って大嶋専務だったの?


大嶋専務が私達の前に立つと、険しい表情をしていた栗山さんの顔が悲しげに歪む。


「まさか栗山君が私の為にこんな愚かなことをするとは……」

「専務……」

「栗山君とは付き合えない。君が私の秘書を外れる時、そう言ったはずだが……?」

「覚えてます。だから……こんな愚かなことをしたんです。私が専務を社長にすることができれば、振り向いてもらえるんじゃないかって思ったから……」


――栗山さんは大嶋専務が好きで堪らなかったそうだ……


でも、その気のない専務は仕事終わりに自宅まで押し掛けてきて食事の用意や身の回りの世話をする栗山さんを徐々に疎ましく思うようになっていった。