アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】


――一月三十日、土曜日。


いよいよ今日は、合同会社の設立発表の日だ……


設立発表が行われる前の打ち合わせは、午前十一時から。秘書課はその三十分前に集合することになっていた。


立食のビッフェスタイルと聞いていた会場に入ると、室内に置かれた幾つもの丸テーブルの上に予想以上の豪華な料理が並んでいる。


「うわっ! 凄い。昼食を兼ねて~とか言ってたから、サンドイッチくらいの軽食を想像していましたけど、これはちょっとしたパーティーですね」


美味しそうな料理を前に元木さんはテンション高く喜んでいたが、私はこの後の会見のことが気になって全く食欲がない。


愁は心配ないと楽観的だったけど、私は完全に悲観的だった。山辺部長の言うように、もし本当にCEOが裏切っていたらと思うとゾッとする。


愁はもうホテルに着いたんだろうか……


ぞくぞくと集まってくる社員を気にしながら腕時計に目をると、元木さんが辺りを見渡し、栗山さんが居ないと騒ぎ出す。


「さっきまで一緒に居たのに……社長が来る前に会場入りしていなかったら、根本課長の雷が落ちますよ」


私も心配になりドアの方に視線向けると、栗山さんではなく山辺部長が会場に入って来るのが見えた。


もうひとりの主役の登場に一気に緊張が高まる。けれど、山辺部長の後ろから顔を覗かせた人物を見てその緊張がぶっ飛ぶくらい驚いた。


「ええっ? うそ……」


そこに居たのは、いつもよりメイクが濃いピンクのスーツを着た唯だった。思わずふたりの元に駆け寄り、どうして唯がここに居るのか訊ねると……