私も栗山さんの彼のことは気になっていたが、私のよけいな一言で彼女を不快にさせてしまってからは、なんとなくその話題を避けていた。でも、元木さんが言うように、最近の栗山さんは凄く明るい。


利用されてお金を貢がされているとか、私が想像していたようなことはないのかもしれないな。


それからすぐ元木さんとも改札で別れ、駅中のホールの隅で山辺部長に電話を掛けると、待ち構えていたようにワンコールで電話に出た。


そして自分も設立発表会に研究所代表として出席することになったと早口で捲し立てた後、設立発表で凄いことが起こると言ったんだ。


『メディスンカンパニーのCEOからようやく返事がきてね……合同会社には参加しないと言ってきたよ』


おそらくこれは、愁とメディスンカンパニーのCEOが仕組んだ罠。まんまと引っ掛かった……そう思ったのだが、山辺部長の一言でなんだか怪しい雰囲気になってきた。


『八神常務がメディスンカンパニーのCEOに、合同会社設立を妨害する人物が現れるかもしれないと伝えて色々作戦を練っていたようだが、残念ながらその作戦は失敗に終わったようだね』


えっ……どうして山辺部長がそのことを知ってるの? まさか……メディスンカンパニーのCEOが裏切ったとか、そんなことないよね?


「あ、でも、CEOも会見の為、来日すると聞いてますが……」

『その設立発表の記者会見の直前に撤退を伝えるそうだ。そしてウチの会社を除いた他の合同会社参加企業と新たな会社を設立するらしい。つまり、バイオコーポレーションだけが除け者にされるってことだ』