よくよく話しを聞くと、もうすぐ早紀さんの誕生日だそうで、翔馬がなんでも好きのモノをプレゼントすると言ったらしい。


「今日はその下見に来たんです」

「なっ、指輪なんてまだ早いわよ!」


アラサーの私がまだ貰ったことないのに、学生の分際で指輪だなんて……と思ったが、早紀さんは構わずショーケースの中のウン百万円もする指輪を指差し「指輪と言えば、やっぱダイヤですよね~」なんて言っている。


「翔馬にそんなの買えるワケないでしょ?」

「分かってますよ~これは目の保養です。ほら、あれなんて素敵じゃないですか?」


つい釣られて早紀さんが指差した指輪に目をやると、それは、滴型をしたブリリアンカットの大粒のダイヤだった。高貴な輝きを放つダイヤに私の目は釘付けになり、思わず息を呑む。


「ホント、素敵ね……」


煌めく光に目を細めて呟くと、早紀さんが私の肩をツンツンして「愁君に買ってもらったら?」と茶化すように言う。


あ……愁からこんな素敵な指輪を貰えたらどんなにいいか……


一気に気分が落ち込み指輪から目を逸らして俯く。が、ハッとして慌てて顔を上げた。


早紀さんなら愁と何か話しているかもしれない。


「ねぇ、早紀さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」


しかし残念ながら、愁が渡米してから連絡は取っていないとのこと。


「じゃあ、その……早紀さんの身内で近々、誰か結婚するとか……そんな話し聞いてない?」


それとなく探りを入れてみたが、早紀さんは何も知らないようでキョトンとした顔をしている。