「冗談じゃないわよ! なんであんな自己中の俺様野郎と一緒に寝なきゃいけないのよ。だいたいね、アンタが悪いのよ。どうして八神常務のこと、事前に教えてくれなかったのよ!」


私の本気の怒りが伝わったようで、翔馬が意気消沈して下を向く。


「なんだよ……せっかくサプライズで姉貴を喜ばそうと思っていたのに、一年ぶりの感動の再会にはならなかったのか……」

「感動? その反対。最低、最悪の再会だったわよ」


ペットボトルをシンクの上にドン置き、翔馬を睨む。すると翔馬が腕組をして首を傾げた。


「でも、八神さん、姉貴に会うのめっちゃ楽しみにしてたんだぜ。これからはずっと一緒に居られるって子供みたいに浮かれてたんだけどなぁ~」

「それはね、私を利用してやろうって思っていたから。あの人は自分のことしか考えてないのよ」


怒鳴り散らして再びミネラルウォーターを飲もうとしたら、翔馬がカウンターから身を乗り出し「そんなことない!」って真顔で叫ぶ。


「八神さんはそんな人じゃない。俺のことも姉貴や母さんのことも真剣に考えてくれてるんだ。このマンションだって俺達家族の為にわざわざ買ってくれたんだぞ」

「えっ、私達の為に?」

「あぁ、八神さんに姉貴には言うなって言われていたから黙ってたけど、八神さんは、姉貴や母さんが安心して暮らせるようにって、完璧なセキュリティのこのマンションを二億円出して買ってくれたんだ」

「に、二億円?」