――翌朝……


昨夜はあのまま眠ってしまったようで、目を覚ますと翔馬の部屋のシングルベッドの上で毛布を抱き締めていた。でも、なんだか体が重くて熟睡した気がしない。


パソコンデスクの上のデジタル時計に目をやれば、まだ午前五時。もう少し寝ようと瞼を閉じたが、なぜか眠れず、喉も乾いたので起きることにした。


足音を忍ばせリビングのドアを開けると、シャンデリアの光とムワッとした暖かい空気が廊下に流れ込んでくる。見れば、明かりを点けたまま暖房をガンガン利かせて翔馬がソファーで眠っていた。


あっ、そうだ。翔馬のことすっかり忘れてた。翔馬の部屋の鍵を閉めて寝ちゃったから、中に入れなかったんだね。


悪いことをしたと思ったが、よくよく考えてみれば、こんなややこしことになったのも、元はと言えば、翔馬が何も言わなかったのが原因だ。


マンションのことも、八神常務のことも、初めにちゃんと話してくれていれば、ここまで大騒ぎせずに済んだのに……


翔馬のせいでこんなことになったんだから、一晩部屋を占領するくらいどうってことないよね。


開き直ってキッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出そうとしていたら、翔馬が気配を感じたのか目を覚ます。


「……んんっ? 姉貴?」

「おはよ。まだ早いから自分の部屋へ行って寝れば?」


素っ気なく声を掛け、ミネラルウォーターを喉に流し込むと翔馬がカウンターキッチンに駆け寄って来て、どうして八神常務と一緒に寝室で寝なかったんだと不満そうな顔をする。