あ、確かに……
恥ずかしくなり彼の腕の中で縮こまっていると、八神常務が更に問い掛けてくる。
「他の女と交わした結婚指輪だと思ったんだろ? そんな指輪でももったいないと思うのか?」
えっ……何それ? まるで私がこの指輪に嫉妬しているみたいな言い方じゃない。
真意が知りたくて振り返ろうとしたのだけれど、彼がそれを阻止するように私の肩に顎を乗せ「お前、俺に惚れているんだろ?」って言うからぶったまげて心臓が止まりそうになった。
「お母さんに聞いたぞ。お前、俺に告白しようとしていたそうじゃないか?」
「ぐっ……」
自分の恥部を覗き見られたような恥ずかしさで、顔がカッと熱くなる。
「ややや、八神常務、な、何言ってるんですか……」
「とぼけるなよ。一年前、翔馬経由で聞いたんだから間違いない」
実は翔馬が大学に合格し、東京に引っ越してすぐ、翔馬から私と八神常務の関係はどうなっているんだと聞かれ自然消滅したと伝えていた。
翔馬はショックを受けているようだったが、諦め納得した……と思っていたのだけれど、その後、翔馬が母親と電話で話している時にそのことが話題になり、母親が『もう本当のことを言ってもいいわよね』と私と八神常務が偽りの恋人だったことをバラしてしまった。
そして私が八神常務を本気で好きだったことも暴露してしまう。驚いた翔馬はすぐさま八神常務と連絡を取り、母親に聞いたことを全て話して私を本当の恋人にしてやってくれと頼んだ……
げっ! そんなことがあったなんて、全然知らなかった。
しかし私が知らなかったのは、それだけじゃなかった……



