エントランスと同じマーブル模様の大理石の廊下を行き、連れて行かれたのは、想像していたよりも遥かに広いシックで落ち着いた雰囲気のリビング。
駆け寄ったパノラマウインドウから望む景色は、翔馬が絶景だと絶賛していた美しい都会の夜景――
「……綺麗」
それ以外の言葉が思いつかない。暫くその瞬く光に目を細め見入っていたが、ふと我に返るとこの夢のような状況が怖くなってくる。
「ねぇ、お願いだからちゃんと説明してよ」
ダークブラウンのレザーソファに座ってスマホをいじっている翔馬の元に駆け寄り問い詰めると、やっと翔馬が事の真相を話し出した。
ここは翔馬の知り合いが所有しているマンションで、翔馬がその人物に家族が上京してくるので一緒に住むマンションを探していると相談したところ、ここを自由に使っていいと言われたそうだ。
実に胡散臭い話しだ……
この世知辛い世の中、そんな神様みたいな人が居るとは思えない。まさか翔馬のヤツ、ヤバい組織とイケナイ関係になってしまったんじゃあ……
「……翔馬、怒らないから本当のことを言って。アンタ、人に言えないようなことしてんじゃないの?」
「はぁ~? 姉貴、バッカじゃね?」
「だったら、この部屋を貸してくれた人に会わせてよ。アンタが言ってることが本当なら、ちゃんとお礼を言わないと……」
しかし翔馬は「その内な……」と言うだけで、またスマホに視線を落としディスプレイの上で忙しく指を動かしている。が、突然指を止め、慌ててスマホをコートのポケットとしまうと床の上に置いたリュックを持ち立ち上がった。



