翔馬が白い歯を見せ得意げに説明してくれるが、私が知りたいのは、そんなことじゃない。
「ねぇ、アンタの頭、大丈夫? 一般庶民の私達がこんな所に住めるワケないじゃない。こんな高級マンションの家賃、どうやって払うのよ!」
「あ~やっぱりな、姉貴ならそう言うと思ってたよ。でもさ、そんな心配要らないって! ここの家賃は払わなくていいんだから」
「家賃を払わなくていい? それ、どういうこと?」
「だってここ、賃貸じゃねぇし」
翔馬のその一言で私の頭の中は大混乱。
賃貸じゃないってことは、買ったってこと? えっ……まさか私や母親になんの相談もなく勝手に?
いやいや、そんなの有り得ない。まだ未成年の翔馬がマンションなんて買えないでしょ? それに、買ったのならローンの支払いがある。
ちゃんと説明してと言っても翔馬はもったいぶるようにニヤリと笑いエレベーターホールへと歩き出す。仕方なく後を追いエレベーターに乗り込むも、不安で落ち着かない。
しかし翔馬はそんな私のことなどお構いなしで、冗舌にこのマンションの自慢を始める。
なんでも、このエレベーターは住人専用と来客用に分かれていて、住人専用のエレベーターはカードキーがなければ作動しないそうで、エレベーターの扉が開けば、すぐ自宅の玄関らしい。
「誰とも顔を合わすことがないからセキュリティ一も万全だ」
翔馬がそう言ったのと同時に到着音が響き、エレベーターの扉が開くと、本当にその先が住居の玄関になっていた。



