アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】


結局、並木主任は何も言ってくれず、疲れたからと早々に布団に潜り込む。


さて、そうなると私はどうすればいんだろう。まだ寝る時間には早いから居間に戻ろうか? でも本音を言えば、私も疲れたからこのまま寝てしまいたい。


決めかねていると並木主任が眠ったようだったので、これ幸いと静かにベッドに入り明かりを消す。


しかし隣で並木主任が寝ていると思うと疲れているのになかなか寝付けなくて、何度も寝返りをうっては、布団の中で控えめなため息を付く。そして考えていたのは、もちろん並木主任のこと。


もし彼がへき地に飛ばされたとしたら、結婚はどうなるんだろう? 東京に戻って来て欲しいと願っていた彼女は並木主任に着いて行くんだろうか?


疑問が疑問を呼び、目が冴えて全然眠れない。と、その時、突然静寂を破り「眠れないのか?」って低い声が響く。


「えっ? 並木主任、起きてたんですか?」

「んっ? あぁ、ちょっと考え事をな……」


考え事……? もしかして並木主任も彼女のことを考えていたんじゃあ……


そう思ったら、もうダメだ。知りたいという欲求に勝てず、暗闇にぼんやり浮かぶ彼の横顔に向かって叫んでいた。


「あの、最後にひとつだけ、並木主任が好きな人って、どんな女性ですか?」


なんでもいいから彼の心を奪った彼女のことが知りたいって思ったんだ。髪はショートなのか、ロングなのか、体形はぽっちゃり? それともスレンダー?


そして並木主任がへき地に異動になっても、一緒に着いて行ってくれる人なのか……