アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】


……おいおい、翔馬、大丈夫か? 続けるって何を続けるのよ?


翔馬の意味不明な言動に一抹の不安を感じる。


今まで試験の時でさえ、ほとんど勉強してこなかったから、急に勉強をするようになって脳みそが驚いてどうにかなっちゃったんじゃあ……


心配する私の横で並木主任が突然手を叩いて笑い出す。


「なるほど、そういうことか! 翔馬は俺とお前がエッチなことしているって思ったんだよ」

「えええ、エッチ?」

「翔馬の方からだと、お前が俺の股間に顔を埋めているように見えたのかもな」

「私が……並木主任の股間に顔を……?」


やっと状況を理解し、愕然とする。一刻も早く翔馬の誤解を解かなくてはと思ったのだが、並木主任は「勘違いさせておけばいい」と私の腕を掴む。


「なっ……無責任なこと言わないでくださいっ!」

「無責任? 翔馬の前では俺とお前は恋人同士なんだぞ。エッチなこともするだろ?」

「あ……」


言われてみればそうだ……なんて納得できるワケがない。キスを疑われるならまだしも、あのシチュエーションは生々し過ぎて教育上よくない。


やはり疑惑を晴らした方がいいのでは……でも、並木主任が言うように、平然としていた方が自然なんだろうか? 男性経験が乏しいから、こういう時の正しい対処法が分からない。


考えあぐねていると、いつの間にかキッチンに移動していた並木主任が私を呼ぶ。


「なんだ、お前もまだ飯食ってなかったのか? 味噌汁温めたからこっちに来いよ」