「かすみちゃんの髪の毛ってゆるふわだね。」

「あっそのピンクの服ビズ・ビサだ〜。」


女子の会話は服がどうだの、髪がどうだのと相変わらずだ。


それよりも、
山内かすみが俺の前の席ということに俺は湧き上がるテンションがおさまらない。


これは、マンガみたいだ。
そのため俺はニヤニヤしてしまうこの顔を見られまいと机に伏していた。


すると、
「ほらー、自己紹介したら?」
そう言って幼なじみは俺の頭を揺らす。


とっさに顔を上げると、
後ろを振り返った山内かすみがこっちを見ていた。


…近い近い近い。 落ち着け落ち着け。


「あああ、えっと…」

胸がバクバクとしてなんだか上手く話せない。
と、その時


「山内さん?消しゴム落としたよ。」

そう言ったのは山内の左の席、
俺からは左斜め前のガリ勉くんだった。

「ありがとう。」

「いいえ!」

そしてガリ勉くんは笑顔を見せて、
予習だろうか復習だろうか、算数のドリルの続きを始めた。

たったそれだけのことなのに、

なんだか気にくわない。



山内と、まだしゃべってない。


それにしても、
1度タイミングを逃すと、話しかけるタイミングが分からなくなる。


それから、
消しゴム落とさないかなとか、
プリントを後ろから前に渡すような授業他にないかな、とか。


そもそも山内が目の前にいるだけで、
黒板をろくに見もせずに授業が終わったということが今日は続いた。


これは、重症だ。