4月、入学式。
俺は晴れて中学1年生になった。
パツパツの学ランを着て、身も心も大人になったようだ。
俺がこれから3年間通うこの中学校は、3つの小学校が集まってきた学校だ。
もちろん幼なじみたちもいる。
マドンナ様もいる。
勇もいるし、
山内もいる。
そういえば今日の朝、入学式前にクラスの名簿を見て教室に向かっている時に、山内の姿を見かけた。
中学校の校則に従ってか、髪を低めに1つに結んで、
なんていうんだっけ、
触角というものを出していた。
そして何より制服姿がめちゃくちゃ可愛かった。
あれは、やばい。
絶対モテる、とそう思った。
そんなことを考えながら、俺は新しいクラスである1年3組に向かった。
小学校は2クラス制だったが、中学校は4クラス制だ。
だから、テストの時などに『3組』と書くのが、何気に嬉しかった。
ちなみに山内は、俺のクラスの1つ手前の教室に入っていくのが見えたから、2組だろう。
少し残念だ。
いや、結構落ち込んでいる。
すると、
「おーい!」
後ろで声が聞こえたため振り返ると、
「俺も3組!」
勇が走ってきた。
「やっぱ同じ小学校のやつが
いると安心するわ。そういえば山内は2組だったな。ドンマイ。」
「…お前さ、わざわざ言わなくていいよ。」
「まぁ気をつけろよな。さっき俺の横を山内が通り過ぎたんだけどさ、別の小学校の奴が山内のこと可愛いって話してたぜ?」
「マジで?」
「おお、『今通った子可愛くね?』ってさ。」
「はぁ…、だから昨日の夜は心配でなかなか寝れなかったんだってのに…。」
これは本当だ。
昨日の夜、
新しい生活によるワクワク感となぜか緊張と、
山内と同じクラスになれますように、なんてことを祈りながら寝ようとしていた。
しかし、同じクラスになれなかった時のことを考えては、色々心配になっていたのである。
「いやいや…お前ってそんなキャラだったっけ?小6の時は1番モテてた奴がさ…。」
「いやお前の方がモテていたと思うけど。」
「マジで?」
急に勇の顔が嬉しそうに明るくなった。
わかりやすいやつ。
「あぁー俺も中1になったし彼女つくりてー!」
「まぁ、お前ならすぐにできると思うよ。てかそろそろ教室入ろうぜ。」
「おう!」
また1つ、新しい空間に入り、新しい空気を感じる。
大好きなあの子も、教室の窓際の席で、空を見ているにちがいない。