いつもは駅でバイバイなのに、今日は家まで送るといって聞かないから。
「…この道を2人で歩くのは何回めかな?」
「うーん……5回は来てる」
「意外といっぱいだね」
「少ない方じゃない?4ヶ月も付き合ってるのに5回しか来てない」
「そっかあ。じゃあ、受験終わったらいっぱい来てね。私も行くし」
いっぱいを増やそうね、2人でさ。
「塾、本当に良かったの?」
「うん、振替できるし。今日だけ実礼奈優先」
さっきの私だったらダメだよって言ってたけど。
「ありがと」
これは細野の優しさだから甘えてみる。
「…ごめんね。実礼奈。俺、ほんと余裕なくて」
切り出したのは、あまりに突然で。
でもなんとなく、予想もできた。
「私こそごめんね。私の価値観、押し付けちゃった」
「でも、俺が…」
「じゃあ、2人が悪かったってことにしない?」
後ろを振り返ってたって仕方ないもんね。
大事なのは今、細野とどう向き合うかだもん。
「そうだね」
細野も笑ってくれた。
だからきっとこれでいいんだろうな。
「…ねえ、実礼奈。琢磨くん、案外悪い人じゃなさそうだね」
「でしょ!細野もそう思う?」
「まだちょっと敵だけど。仲良くなれそうだよ」
「敵って?」
「…ううん。実礼奈はそのまま、なにも考えないでいて」
若干不服だったけど、もういいや。
細野と笑ってられるだけで、もういいや。



