誰かにぶつかったのはわかった。
ただ、誰かまでは声を聞かなきゃわからなかったけど。
その声で、あっという間に分かっちゃうんだ。
「…琢磨くん」
優しい琢磨くんは、酷いであろう私の顔を人様から隠すようにそっと抱きしめてくれた。
「なにがあったんだよ。大好きな彼氏サマと喧嘩でもしたのか?」
「した」
「おい、図星かよ」
「…だってぇ」
「はいはい、分かったから泣くな」
いいこ、いいことなだめてくれた。
子供みたいに私の頭を撫でながら。
「なにしたんだよ」
「喧嘩」
「だからその内容を言えよ」
「考えた方の違い…?」
多分そう。
きっと私たちはまだまだ子供だから。
「…お前は今でもあいつが好きか?」
あいつに心当たりがあるのは1人しかいないけど。
「好きだよ」
きっと多分、喧嘩した相手のことだから。
私は自信を持って好きだと言える。
男の人に抱きしめてもらってる時点でこんなの酷い。
私はかなり酷い女みたい。
自覚しちゃった。



