「実礼奈!おかえり。さっきの授業、チャイム鳴ってから入ってきたけどどうしたの?」


仲のいい澪(みお)が優しく聞いた。


「さっき、不思議な男の子にあって。ずっと寝てるの」


ずっと寝てるの、多分。


ううん、全部ではなかったみたい。


寝たふりしてたって言ってたから。


「名前とか、聞いた?」


「琢磨って、言ってた。澪、知ってる?」


その瞬間、澪の目の色が変わった。


「実玲奈、関わっちゃダメだよ」


「え、なんで?」


さっぱりとカッコいい澪がぎゅうと眉根を寄せて、私を心配することって、そんなになかったと思う。


「あの人は、暴走族の人だから」