「あの…」
トントンと机を叩いてみる。
…返事はない。
「あの、もう授業始まりますよ?」
まだ人はいないけど、もうすぐなのは本当。
きっと、これから人が駆け込みで入ってくると思うけど、時間の問題だ。
時間がない。
肩を小さく叩いてみた。
何も返ってこない。
「あの!」
人が来るんですけど!
「…ん」
低い。
音域でいうならきっと、テノール。
そんな音が私の耳に入ってきた。
起きた!
「あの、もう授業始まりますよ」
「…んあ、これから何限?」
「5限ですけど…」
タメっぽく見えるけど、いきなり敬語をつけないのは、どうなんだろう。
「まーだ、そんな時間。俺、6時まで寝るんだ。起こしてくれたの感謝だけど、邪魔かな」
「え、でも授業が…」
「あー、先生みんな無視してくれるから、いーの」
無視…?
「そんなことあるんですか」
「あるよお、俺限定ね。とにかく今は睡眠の邪魔。話しかけないでくれない?」
冷たく鋭い刃のような言葉は、私の胸に刺さったけど。



