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あたしの目の前で、永治はカチャンと箸を置いた。


「お前もう女やめれば?」


な…っ。


彼の隣りでは、秋人が腹を抱えて爆笑している。


「何このどす黒いの、何この味付け。しょっぺ~っ」


「う、うるさいわねーっ! 嫌なら食べないでよっ」


多大な恥ずかしさに耳まで熱くなる。


「オマケに玉子焼き、カラ入り~。超ウケる~」


秋人が更にダメ出しする。


「もう、秋人までっ!」


ダイニングテーブルを囲み、3人で夕食をとる異様な光景。


あたしはふてくされつつも、せっせと箸を動かした。


「ある意味すげーよな、どうやったらこーなるんだろ」


隣りの秋人へ無邪気に言う彼の笑顔。


その表情にズキンと胸が痛んだ。




…なによ。



何なのよ、その笑顔は。


あたしの前では…そんな顔しないくせに。




再び起こる正体不明の苛立ち。


気持ちがモヤモヤして落ち着かない。


あたしは永治から目を逸らし、唇を噛んだ。