「…ハァ」


翌日。


カフェのバイト中での出来事だ。


あたしは内に溜まったモヤモヤを吐き出すように、大きな大きな溜め息をついた。


「あ~あ~、筑波(ツクバ)さん。幸せが逃げちゃうよ~?」


「浅倉さん…」


無気力な顔を向けると、声を掛けた当人、浅倉さんは人なつっこい笑顔で近付いてきた。


面倒見が良く、人当たりのいい彼は、自称紳士マンの23歳。


「どうした? さっきからずっとぼんやりしてるみたいだけど…」


…さっきからって。


見てたんですね…、そう思うが、あたしは無言で苦笑いを浮かべた。


「いや…、ちょっと」


仕事中である事を思い出したように、あたしは格好だけでもつけようと、店内を見渡した。


混む時間帯では無いので、店内はいつもと変わらず、常連客がちらほらいるだけだ。


浅倉さんの問いに対して、別にはぐらかしても良かったのだが。


あたしは実は…、とつい口にしていた。


「だ、大学の。友達の話なんですけど」


「うん?」


「今日悩み事を相談されて、何か意見が欲しいって言われて」


まわりくどい前置きをしてから、あたしは昨日の事を話し始めた。