鞄を取りに学校へ戻った永治と、高校生カップルみたいに手を繋いで帰る。


聞くと、先ほど一緒にいた女の子は部活のマネージャーで。


雑費を買いに付き合わされたと言う。


‘デートだ’と咄嗟についた永治の嘘も。


振られた自分の、せめてもの見栄だと…彼は言った。



「…この間会った、男の人だけど」


「え…?」


永治は上擦った声でピクリと反応した。


「あれ、誤解だからね?」


「誤解…?」


「うん。…あの日はバイトが遅くなって…そこの先輩に送って貰っただけだから」


深い黒目をぱちぱちと瞬きながら、彼は僅かに口元を緩ませた。


「デートじゃ、ないから」


そう強く言って笑いかけると、永治は安堵に満ちた瞳で、そっか、と微笑んだ。




 ――END――