会いたくてここまで来たのに、すぐ後ろにいるのは分かっているのに…。


緊張から振り返る事が出来ない。


「だれ? 折部くんの知り合い?」


鈴のように響く女の子らしい声に、心臓がドクン、と鳴った。


「ああ…秋人の姉貴」


「え、筑波くんの…?」


苦々しい顔を無理やり笑顔に変え、あたしは今気付いたように振り返った。


まじまじと興味深く見つめる、小柄な女の子と目が合い、小さく会釈する。


「なに…。やってるの? エージ」


制服姿の永治と、その隣りの彼女は何故か手ぶらだった。


「はぁ? なにって。こっちが聞きたいんだけど…?」


永治はいつもの調子で、それでも呆れたように言った。


「あたしが先に…訊いてんだけど?」



ああ、可愛くない。



素直に、会いたくて来た、と。


そう言えたらいいのに、何でこんな台詞しか出てこないんだろ。


あたしは苦い顔で目線を下げた。



「…俺は」



言いながら永治は隣りの彼女を見やる。