今日はそうはいかなかった。


「帰ろ、帰ろ」

「今日は早いから寄り道してく?」


「いいね、会長も今日一緒にどうかな?」


会計の村井さんが聞いて来る。


「うん、私も行こうかな……」


ちらり、と宇佐美くんを見てカバンを持ったその時。


「結衣さん」


宇佐美くんは書類を持って私の元にやって来た。


「すみません。

ちょっと残ってもらってもいいですか?

体育祭の調整の方だけ今日中にしておきたくて」


「……っ、分かった」


逃げられない。

どうにか理由をつけて、帰る方法はあった。


でもそれをさせない宇佐美くんのまなざし。


"残ってくれますよね?"


そうやって言ってるみたいだった。


彼が私の秘密を抱えている限り私は逃げられない。


「…………。」


みんなが帰ってしまいふたりきりになると、

シーンと静まり返った空気が流れる。


正直、気まずい。

早くふたりきりの時間を終わらせて帰ろう。