そう思っていたら、背中を向けて歩き出していた彼がふいに振り返った。


「えっ」

そしてこちらに戻ってくる。


「なんだか呼ばれたような気がして」

ウソ……気づいてた!?


「よ、呼んでないわ」


私はとっさにウソをついた。

暗いから宇佐美くんの顔がよく見えない。


「結衣さん……俺、あなたのこと、すげぇ好きです」

「えっ」


そして宇佐美くんは私の額にそっとキスをした。


「本当は“ここ”にしたいんですけど。今日は我慢します。

寂しくなったら何も気にせずいつでも言ってくださいね」


よく見えなかった宇佐美くんの顔が街頭にあてられ、ハッキリ見えた。

——ドキン。


「……熱い」


額にされたキスが熱い。
心臓がうるさい。


今夜はきっと宇佐美くんのことで頭がいっぱいで眠れないだろう。