「嘘です」

「嘘じゃないって……」

宇佐美くんは私の手をパシっと掴んだ。


「マメなあなたがこんな大事な資料を作り忘れるなんて考えられない。

それに提出した資料みましたけど、あれはあなたの作った資料ですよね?」

「へ、変なこと言わないで……今回ばかりじゃない赤沢くんには前からたくさん助けられていたわ」


すると彼は私の手をゆっくりと放した。



「分かりました、あなたがそういうなら信じます。

変なこと言ってすみませんでした」


そしてその場を去って行く。

私はその背中を手を握り締めながらずっと見つめていた。



また、気づいてくれたのは彼だった。

こうやって言ってくれているのに、

私は彼にいつまでウソを重ねるのだろう。


「……っ、苦しいよ」



つぶやいた言葉は誰にも届かずに消えていった。