「梶浦雅(かじうらみやび)、二十六歳。青蘭女学院、明成大学経済学部卒業後、留学して経営を学ぶ。帰国後は父親である梶浦忠氏について学びながら、兄の収氏のサポートも行う。趣味はバイオリン、幼少時から習っていたその腕前は玄人裸足で、大きな国際コンクールで受賞経験あり。社交界では留学時に培った語学力で外国の要人とも流暢に話し……」
「お願いやめて。もうやめて」
「超、超! 超!! 手強いライバル現るって感じですね!」

 どうやって調べて来たのか、梶浦頭取のご令嬢の情報をマシンガンのごとくぶちまける茉奈ちゃんは、何故かとてもハイテンションだった。

「燃えますね、里香さん! 絶対負けちゃだめですよ!」
「負けるも何も、ただ一緒にご挨拶に来ただけ……」
「それ、本気で言ってます? 見たでしょう、あの社長を見つめる目! 完全にロックオンしてたじゃないですか」

 確かに、ご令嬢の東吾を見る目は大変わかりやすかった。自分をアピールするように、積極的に話しかけていたようだったし。

 結局梶浦頭取のご来訪は、ただの挨拶以外の何物でもなかった。簡単に談笑して、ついでにお土産をいただいただけ。その目的は、誰が見ても明らかだった。……ご令嬢の雅さんを、東吾に紹介すること。

 そう言えば、経団連のレセプションでも頭取は雅さんを伴っていた。あの時に東吾を見初めたのであれば、タイミングとしてはバッチリ合う。

「私は断然里香さん派ですから。シンデレラドリームは本当にあるってことを実証してもらわないと!」