スーパーにつくと、東吾は自然な仕草でカートを押して、早速白菜を吟味し始めた。初めてその光景を見た時は違和感ありありだったけど、あまりに手慣れているのですぐに見慣れた。頻繁に出没するので周りも慣れたもので、時折顔見知りの奥さんにどうも、なんて頭を下げたりしている。

 食材選びは東吾に任せて、私はお惣菜コーナーに立ち寄る。ここのお惣菜はレパートリーが豊富で、出来立てが並んでいることが多く、生粋の庶民舌である私には大満足の味だ。

 料理中に摘まめるようなものを見繕ってカゴに入れ、卵やら牛乳やらの細々としたものを買い込むと、中々の量の荷物になった。
 二人で手分けして袋に詰め、両手にぶら下げてのんびりと川沿いを歩く。まだまだ寒いけれど、道端を見れば、うっすらと緑が芽吹いているがわかる。春の訪れが、すぐそこまで近づいている気配がした。

 リッチなレストランやホテルもいいけれど、こういう日常の延長のようなデートが、私たちには心地よかった。

 新しいビールを開けて二人で広いキッチンに立ち、あーだこーだと言いながら鍋の用意をする。料理の腕はお互い似たようなもので、かえって気を遣わずに済んだ。そのくせ野菜の切り方に変なこだわりを見せる東吾に、茶々を入れたりして。

 お腹いっぱいになって、気持ちよく酔っぱらって、そのままベッドになだれ込む。回数を重ねるごとに、東吾は私のからだを開発していって、私も彼のやり方にすっかり馴染んで、気構えることもなくなった。東吾の腕の中は、どこよりも安心して、自分をさらけ出せる場所になった。

 二人で寄り添う、そんな日々は、間違いなく幸せの絶頂だった。