「喉が渇いちゃった。私もいただこうかな、それ」

 新しいものを出そうと冷蔵庫を開けると、するりと近寄ってきた彼女が飲みかけのボトルを俺の手から取り上げた。ごくごくと喉を鳴らす様を見守っていると、更に四分の一ほどに中身を減らしたところで、満足したのか口を離した。残りを引き取って、とどめをさす。

「ねえ。折角早く目が覚めたのだし、二度寝なんかよりもっと有意義なことをしない?」

 甘えるように体を摺り寄せて、しなだれかかってきた。こちらの腕に柔らかな膨らみを押し付けて、媚を含んだ目で見上げてくる。

「女の方から誘うなんて、はしたないと思うかしら?」
「いえいえ。光栄です」

 半ば想像はついていたけど、昨夜の彼女はそれ以上に積極的だった。
 最近のお嬢様という人種は、素直に箱の中で育っちゃいない。恵まれた容姿と有り余る資金を有意義に使って、自分への投資という名のもと、蝶のごとく飛び回っている。
 別にそんな彼女たちを批判する気は毛頭なかった。上に立つ人間である以上、他人を見る目を養うのは必要不可欠で、いろんな人間を相手にするのは有意義なことだと思う。

 多少刺激的なほうがお好みかと思い、パントリーの冷たい台の上にそのまま座らせて、強引に下肢を割った。ぬるつく場所に口づけると、すぐに嬌声が響き始める。

「とう……」

 彼女の声が自分の名前を紡ぐのを遮るように、口を塞いだ。少しの刺激で極まっていく彼女を、醒めた気分で見つめる。

「きれいだ。……雅(みやび)さん」

 さりげなく容姿を賞賛されると悦ぶ性質のようで、耳元で囁くと中が締まった。あえて名前を呼んで、自分を追い込む。

 本当に、なにもかもが正反対だ、と思った。