真っ赤な顔でしどろもどろになる私を、社長はソファにもたれて楽しそうに見ていたけど、そのうちしびれを切らしたのか手を伸ばしてきた。


「里香」


 頬に手を当て、俯いていた顔をそっと上向ける。


「こっち見て」


 最後の抵抗で伏せていた目をゆっくり持ち上げると、優しく微笑む社長がいた。


「呼んでみ?」


 その目が、声が、甘く促す。
 私は辛うじて届くくらいの小さな声で、囁いた。


「……東吾」

「よくできました」


 笑いながら、社長の……東吾の顔が近づいてくる。
 キスされるのかと思ったら、こつんと額がぶつかった。
 至近距離で、見つめ合う。


「俺が、初めて好きになった女なんだから。自信持てよ」


 そんなセリフを言われたら、嬉しすぎて息ができなくなる。
 今度こそ唇が重なって、本領発揮とばかりに深く貪られた。私は必死で受け止めるようとするけれど、体中から力が抜けて、途中から東吾の腕にしがみついていた。

 唇が離れていく頃には、完全に腰砕けになって、荒く呼吸を繰り返すばかり。

「キスだけでそんな顔できるんなら、この先も期待大だな」

 いくぞ、と囁いて私を横抱きに持ち上げる。私はされるがまま、東吾の首にぎゅっとしがみついた。