帰ってきた私たちを見て、駆けつけてきたコンシェルジュも、ドアマンもフロントも、みな一様に目を丸くした。一体何があったのかと聞きたそうな表情に曖昧な笑みでごまかして、すぐに部屋に引き上げる。

 通された部屋は、それは見事な部屋だった。広々としたリビングルームにダイニングルーム、大きなベッドが鎮座したベッドルーム。美しい調度品が空間を彩り、全ての部屋から都心のまばゆい夜景を望む。リビングルームの片隅には、アンティークのオーナメントに可愛く飾り付けられた、背の高いクリスマスツリーが飾られていた。

 部屋につくとすぐ、社長は適当に寛いでて、と言い捨てて、バスルームに飛び込んだ。私はなんだか所在無くて、とりあえず発見した大判のストールを体に巻き付けると、大きすぎるソファの片隅に腰かける。すると部屋のチャイムが鳴って、出てみるとシャンパンとフルーツ、小さなショコラの盛り合わせと共に、先ほどのコンシェルジュがホットワインを差し入れてくれた。どうぞお風邪など召されませんように、と暖かい言葉をもらって、ほっこりする。

 またソファの隅に戻って、スパイスとレモンが香る少し甘めのホットワインを啜りながら、窓の外の景色を眺めていると、寒さで縮こまっていた体が徐々にほぐれてきた。それと同時に、これからのことに思考が及んで、カップを持つ手に力がこもる。