エントランスに車が止まると、社長が先に降りた。慌てて私も降りようとすると、先回りした社長がドアを開け、手を差し出してくる。滑らかなエスコートにドキドキしながら身を任せ、ドアマンに促されるままホテルに一歩踏み入れると、大きなクリスマスツリーがにぎやかに迎え入れてくれる。
コンシェルジュがすっと近寄ってきて、先頭に立って歩き始める。案内されたのは上層階のフレンチレストラン。本国で三ツ星を取ったシェフが海外に初出店したという店で、一年先まで予約が取れないと噂なのに。
個室に通されると、大きな窓から煌めく都心の夜景が一望できた。吸い込まれるように魅入られていると、苦笑気味に声がかけられる。
「気に入ったか?」
はっとして向き直ると、リラックスした様子の社長が真っすぐにこちらを見ていた。
「はい。その、なんていうか」
きらきらに飾り立てられて、高級ホテルの三ツ星レストランに案内されて。目の前には絶世の美男子が、麗しい微笑みを浮かべて座っている。
「夢みたいです……」
そう。まるで夢を見てるみたいだ。
シンデレラも真っ青の、女の子なら誰でも憧れるおとぎ話のお姫様。
今日の社長は優しくて、仕事の話は一切しなかった。会話の引き出しが豊富で、こちらの話もうまく引き出してくれるので、ずっと話していられる。次々に供される目にも美しい美味しい料理、社長がチョイスするのは一杯いくらか見当もつかないシャンパンやワイン。
夢の中に溺れていく。楽しくて楽しくて、頭の芯まで酔いしれていく。
