「これ、さすがにちょっと、派手じゃっ」
「あら、お客様のお顔立ちにぴったりですよ。あの上條さまのお隣に立つんだから、これでも地味なくらい」
あっぷあっぷしている間に下着から何から全て取っ替えられ、二人がかりでヘアメイクを施される。
されるがまま身を委ねて出来上がったのは、艶やかだけど上品さも併せ持った、どこから見てもイイ女の私。紅のドレープが幾重にも重なったワンピースは見た瞬間派手だと思ったけど、深みのある色味が思いのほか落ち着いて見えて、確かに私の顔立ちに映える。
ヘアもメイクも華やかだけどうるさくないちょうどいいところを攻めていて、流石プロだと感心する。全身でいくらかかっているのかは、怖くて想像したくない。
お姉さんたちに促されてウェイティングスペースへ行くと、慣れた様子でシャンパン片手に寛いでいた社長は、私を一目見て満足そうに頷いた。
「似合ってる」
「ありがとうございます……」
素直に褒められると異様に照れ臭い。私たちの様子を見守るお姉さんたちの視線がなんだか微笑ましいのが痛い。
ぬっくぬくのコートを羽織らされ外に出ると、すでに陽は落ち切っていた。都心はどこもクリスマス仕様で、キラキラしたイルミネーションを横目に車は街中をひた走る。やがて辿り着いたのは、最近オープンしたばかりの外資系の超高級ホテルだった。
ひい、とみっともなく漏れそうになった声を飲み込んだ。私一人では一生縁のないところだ。雑誌を見て、いつかは泊まってみたいと妄想したことは何度もあったけど。
