そのテンションのまま翌日を迎え、いつも通りのお堅いスーツで出社する。メイクもいまいち気合が入らず、肌だけがつるつるピカピカなのがなんとも口惜しい。

 午前中は社内で業務をこなし、懇親会は私も同席する。終わったら当然社に戻ってくるものだと思っていた私に、社長が声をかけた。

「出先から直接行くから。早上がり扱いにしといて」

 はあ。え、でも、四時には終わりますよね? 
 一杯ひっかけるには少々早すぎません?

 疑問に思ったけど口には出さず、言われるがまま終業の準備をした。

 懇親会は滞りなく終わり、松原さんの待つ車に戻る。少し長引いたとは言えまだ四時過ぎだ。行先はすでに告げられていたようで、松原さんは社長の指示なく車を走らせる。さあ、一体どこへ向かうというのか……。

 全く見当がつかず内心落ち着かない私が降ろされたのは、少し奥まったところにあるえらくオッシャレな建物で。

「ここはどこですか……?」
「服屋」

 小さく掲げられた看板を見てピンときた、ここ、名前だけ聞いたことある。セレブ達が集う、会員制の超高級セレクトショップじゃない。

「なにゆえこのような所へ」
「なにも用意しなくていいって言っただろ。ここで全部揃えればいいから」

 なにそのプリティウーマンごっこ。それ、そういう意味だったの!?

 レセプションのお姉さんはにこやかに私たちを迎え入れ、社長は常連なのか、親し気にお話をしている。私は待ってましたとばかりに奥に連行され、数人のお姉さんに取り囲まれた。服を脱がされ、とっくりと見分され、採寸され、一生縁がないであろうと思っていたハイブランドのお洋服たちをこれでもかとあてがわれ。