これから年末までは定例の行事を消化するために一時的にストップするけど、年が明けてからは文字通り新しくスタートだ。わが社が生き残るための大改革に自分も中心で携われるなんて、責任を感じる反面、とてもわくわくする。忙しいのは覚悟の上だ。社長が仰る通り、気合を入れなおさねば。

 よし、と自分に喝を入れて、早速デスクに向かう。
 今日の会議録はいつあがるだろうか、神崎室長にもお話を……。

 頭の中が仕事モードに切り替わった私に、社長から声がかかる。

「佐倉さん。二十四日の予定はどうなってる?」

 すぐにスケジューラーを開いて確認する。

「午前は社内ミーティングが二件、午後からは懇親会に出席の予定です。四時に終了予定で、そのあとは特になにも」
「違うよ。君の予定だ」
「は?」

 顔を上げて社長を見て、またどきりとする。
 私に向けられていたのは、さっきの……キスの時の、優しい微笑みだった。

「夕方から空いてる?」
「は、それは、その、なにもございませんが……」

 妙齢女子が聖なる夜になんの予定も入っていないのは残念なことこの上ないが、現実に暇なんだから仕方ない。ここ二年ほど、一人で白髭おじさんのチキンを貪るのが恒例となっている。今年は特に忙しくて予定なんて立ててなかったから、当然そうなるだろうと思っていたけれど。

「じゃあそのまま空けといて。祝杯に付き合って欲しい」
「はい……」

 惚け面で頷いた私によろしく、とだけ言って、社長は涼しい表情で仕事に取り掛かる。その真逆で、お仕事モードから一気にお花畑に引き込まれた私は、結局その後も全く仕事にならなかった。