じゃあできたら呼んでください、と言い置いて、さっさと店を出て行ってしまった。結局誰に渡すのかすら伝えていかず、これで私にどうしろと、と唖然としていると、クマの男性が小花を選びながら近づいてくる。
「無茶なこと言うよね。仕事でもああなの?」
「もっと建設的な指示を出してくださるのですが」
「でも横暴でしょ?」
「……ノーコメントで」
あっはっはっと豪快に笑いながら、こんなのどう、といくつか組み合わせて見せてくれた。
半ば開き直って二人で花を決めていき、ブルーと白でまとめた上品なアレンジに仕上げる。店の外でふらついていた社長を呼び込んで完成した花束を見せると、満足そうに一つ頷いた。
いってらしゃいと見送ってくれるクマさんに頭を下げて、近くで待機していた車に乗り込むと、次に見えてきたのはたくさんの木々が連なる緑豊かな並木道。初めは公園かと思ったけど、車から降りて足を踏み入れると、そこはどうやら。
「お墓……?」
「いくぞ」
戸惑いながらも花束を抱えてついていくと、途中で手桶と柄杓を準備しつつ、社長は勝手知ったる顔で、ずんずんと先に進んでいく。やがて一つのお墓の前で立ち止まると、手にしていた桶を置いた。
何の変哲もない、小さなお墓。墓石には、松江家之墓、と刻まれている。
「これは、どなたの……」
「母親」
何気なく訊いた質問に、思いもよらない答えが返ってきた。
