確かに、うちの会社は歴史があるばかりに、旧態依然とした考え方の人間ばかりだ。そのせいで経営が傾き続けるんだっていうのは、若手の社員全員の意見。
「まあ、ただの噂だから真相は知らないけどさ。そういう話があるってのも事実。……あーめんどくせえ話ばっかでつまんねえ。どっかにいい女いねえかなあ」
単細胞真木はすぐにいつもの合コンしたい病が現れて、俺にうるおいを、とか叫んでいる。それに適当に相槌を打ちながら、私は働き続ける社長の顔を思い浮かべた。厄介払いされた人間が、あんなに必死に働くとは思えないけどなあ。
まあ、ただの噂だって言ってるし。
私はすぐにそう納得して、結局飲んでいるうちに忘れてしまった。
結局その後日付が変わるくらいまで飲んで、終電を逃してタクシーを拾う羽目になった。いくら酔わないとはいえ平日に飲みすぎたなと、若干の二日酔いで痛む頭を抱えながら出勤する。
朝一番の仕事は社長室の掃除だ。定期的に清掃業者が入るけれど、日々の掃除は私がやる。これは指示されたわけじゃなくて勝手にやっているのだけど、特に文句を言われたこともないので、「余計な事」には含まれないらしい。
上條社長の朝は早くて、私が出勤するとすでに在室していることもざらにあるのだけれど、今日はまだのようだ。社長がいらっしゃるとあまり時間をかけられないので、いない時はいつもより丁寧に掃除する。隅々まで埃を取って、細かい部分まで拭きあげて。他の業務では役立たずなので、できるところはしっかりとやっていきたい。
