最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~



「誰のことを考えているのかしら?」


 はっとして噴水から視線を戻すと、気づかぬうちに足を止めていた俺を、隣から雅さんが静かに見上げていた。

 腕に添えていた手を離し、体ごと俺に向き直る。小首をかしげてこちらを窺う目は、なんだか挑戦的だった。

「意外と優柔不断なのね、東吾さん。がっかりしたわ」

 いきなり投げかけられた言葉に、唖然とする。

「は?」
「決断力のない人間は経営者には向いてないわ。グズグズしてたらすぐに好機を逃す。他人に背中を押されなきゃ動けないなんてもってのほか」
「はあ」
「何をごちゃごちゃ考えているかは知らないけど。十年後に誰といたいか、答えはそれで十分じゃないかしら?」

 彼女が何を言わんとしているのかおぼろげにわかってきて、自然と姿勢が伸びた。


 一番それをするにふさわしくないであろう人が、今俺の背中を押そうとしている。


 俺が理解し始めたことが伝わったのか、彼女は腕組みをすると不敵に微笑んだ。

「私、今までそれなりに男の方とお付き合いしてきて、中には不慣れでつまらない方もいらっしゃいましたけど。東吾さんとお付き合いして初めて知りましたわ、誰かと比較されながらするセックスは本当に最低。男としても経営者としても魅力がない人間と結婚するなんて愚の骨頂」

 あけすけだけど最もな意見になにも返す言葉がない。