最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~


 社長室の窓からは、十二月の終わりとは思えないほどうららかな太陽の光が差し込んでいた。
 今朝見た天気予報によると夕方から明日の朝にかけて今年一番の寒波が日本海側を襲うらしいが、そんなことは一切感じさせない空だった。朝見るにしてはメイクが濃いお天気キャスターは今年はホワイトクリスマスですね、なんてわざとらしく微笑んでいたが、その予言は外れたらしい。

 そういえば、去年のクリスマスイブもよく晴れていた。
 もう一年経つのかと思うのと同時に、まだ一年か、とも思う。里香と過ごした時間は俺にとっては日常になりすぎて、まるで半生を共にしてきたような感覚に陥るけれど、実際はあまりに短い。

 よほどぼんやりしているように見えたのか、報告を続けていた神崎が、こほん、と咳払いをした。

「社長。聞いてますか?」
「聞いてるよ」
「ならばせめてこちらを向いてください」

 説教に移行しそうな予感がして、渋々椅子を回して半回転する。こいつは二人きりになると、昔の癖か、口うるさくなるのがいけない。

「もう今日は退社されてはどうですか? ご令嬢がお待ちでしょう」
「生憎そのご令嬢が仕事熱心で」

 待ち合わせは夕方だ。予約したレストランがたまたま向こうの出先の近くで、今日は珍しく外で落ち合う。

「ホテルは押さえましたので」
「ああ。ありがとう」

 別のホテルを予約していたのに、雅さんが初めての時のホテルがいい、とリクエストしてきたのだ。もう一生使うまいと思っていたけど思いのほか強く希望されて、時節柄もう埋まっているだろうと思ったから神崎に頼んだ。こいつはどこにどう頼むのか知らないが、どんなに予約が取れないと言われている店でも確実に場所をもぎ取ってくる。