最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~


 さらっさらの明るい髪に涼し気な目元、王子様然とした顔にすらっとした長身。モテるのにいつも彼女募集中なのは、見た目と裏腹の口の悪さと単細胞な思考回路のせいだ、きっと。

 真木のビールが運ばれて、改めて乾杯すると、それからはお互い好き勝手に注文して、ひたすら飲む。
 私は結構飲める方だと自負しているけれど、真木も相当飲む。他の人と一緒に飲みに行っても相手に合わせてセーブしなければならなかったりするので、この辺も真木と一緒に飲むのが楽しい理由だ。

 今日は私が愚痴らせてもらおうと誘ったのだけど、真木のほうも相当溜まっていたようで、途中からはむしろ私が聞き役だった。
 真木の所属は研究開発部ライフケミカル課、主に医薬品の原料を取り扱っている部署なのだけど、そこの課長と営業三課の課長が犬猿の仲で。

「考え方がみんながみんな古臭いんだよ。研究開発の意味知ってますか、って聞いてやりてえわ」

 ぶつぶつ言いながら焼酎ロックの氷を揺らす。

「上が喧嘩ばっかしてるからこっちの要望がさっぱり通らないんだよ。なんとかなんない? 社長秘書サマのお力で」
「なるわけないでしょ。あんた今日の私の話聞いてたの?」

 ちぇーっとガキっぽく口を尖らせてから、少し真面目な表情になる。

「俺さあ、実は転職も考えてんだよね」
「嘘っ?」
「ほんと。うちの会社、歴史はあるけどさ、どんどん業績悪くなってるじゃん。天下の上條ケミカルの資本だって言ってもさ、いつ売却されるかもわかんないし」
「それはないんじゃない? 御曹司を社長に就任させたわけだし」