秘書課主催の送別会は、付き合いのあった開発や営業、受付なんかの他部署の人間も巻き込んで、中々の規模となった。酔っぱらった数人から東吾の話題が出かかったけど、周りの良識あるみなさんの助けもあって、全て曖昧に誤魔化した。最後はどんちゃん騒ぎになって、私の送別会なんだか気の早い忘年会なんだかわからなくなっていたけど、この雰囲気が大好きな私にとっては、最高のお別れだった。

 みんなに代わる代わる注がれて、さすがに少し酔っぱらった私を見兼ねて、同じ路線の真木が家まで送ってくれることになった。送り狼になるなよー、とからかわれながら、二人で地下鉄の駅まで向かう。車両の中はやっぱり暑くて、外に出ると冷たい風がのぼせた頭に気持ちよかった。

 真木が一歩先を、子供みたいに手をぶらぶら揺らしながら歩く。

「やっぱもったいねーって、実家に戻るなんて。みんな言ってただろ」

 これからどうするのかという話になって、実家に戻って東京の部屋も引き払うと言うと、みんなから口々に反対された。

「お前、絶対秘書向いてんだし。一時的に帰省してのんびりするのはいいと思うけど、また戻って来てこっちで仕事探せよ。部屋もそのままにしといてさ」
「だって家賃もったいないじゃない。向こうでいい仕事があるかもしれないし」
「ないだろー、どう考えたって。お前は東京のが合ってるよ」