懐かしそうに目を細めて室長が語る人物像は、東吾が話していたのとそっくり同じだ。改めて素敵な人だったんだなと思うのと同時に、室長からそんな人と似ていると言ってもらえて、心から嬉しく思う。

「でも結果的に、それがあなたを苦しませることになってしまいました。今は、あなたを東吾の担当にしたことを、後悔しています」
 
 本当にすみません、とまた頭を下げる室長に、首を横に振って見せる。

「私は、社長の担当を引き受けたこと、後悔なんてしていません」

 悲しい思いもしたけれど、それ以上に幸せな思い出のほうが多かった。二人で過ごせた時間は全部、私の中できらきらと輝いていて、これからもずっと大切にし続けると思う。

「東吾と出会わせてくれたこと、心から感謝します」

 本心から言っていることが伝わったのか、室長の表情が少し柔らかくなった。

「それじゃあ僕は、間違ってなかったと思っていいのかな」
「はい。少なくとも私にとっては」

 できれば東吾にとっても、間違いじゃなかったと思いたい。これから雅さんとどんな道を歩むのか、私にはもう関わることはできないけれど、私と過ごした日々を少しでも懐かしんでくれればいいなと思う。

「私がこんなことを言うのは、おかしいのかもしれませんけど」

 室長に向かって、今度は私が頭を下げる。

「東吾のこと、よろしくお願いします」

 室長は力強く頷いてくれた。

「全力で支えていくとお約束します」

 一人で頑張らなくても、あなたの周りにはこんなにもあなたを思ってくれてる人がいるんだよ、と、東吾に伝えたくて堪らなかった。