玄関の中に入るなり、東吾が強引に唇を貪ってきた。
靴を脱ぐ余裕もないまま、しばらく互いの呼吸を奪い合う。
結局あのまま、二人で家に帰ってきてしまった。あんな気分のままで仕事なんてできないし、早く二人きりになりたかった。
キスを繰り返しながらようやく部屋に上がると、寝室まで待ちきれずに、東吾の手が私の服を脱がせにかかる。お互いの素肌を暴きながら移動して、廊下に点々と脱ぎ捨てた服が散らばった。
私に触れる東吾の手は、いつになく荒々しかった。本能のままに動いて、思うさま私を穿っていく。
その様子はまるで、手負いの獣が母親に助けを求めるような、必死さに満ちていた。助けてくれと、声にならない声で泣いているようで、私はなんとか安心させてあげたくて、その荒々しさを全力で受け止めた。
気を失うようについた眠りから覚めると、東吾は一人、ベッドの端に腰かけて、窓の向こうの夜空を見上げていた。
「何見てるの?」
体を起こして問いかけると、東吾もすぐにこちらを向いた。
「起こしたか。明るかったかな」
布団の波をかいくぐって、東吾の隣に移動する。体に布団を巻き付けて東吾の背中にもたれかかって、彼の肩越しに空を見上げる。
そこには大きな月が浮かんでいた。真っ白な光を発しながら、悠然と輝いている様は、神秘的だけどどこか心を落ち着かせてくれる力があった。東吾と二人、言葉もなく、その輝きに見惚れる。
