副社長と専務が東吾への反意を示して以来、少しずつ、会社の空気が変わっていった。

 会社の方針として改革案を受け入れていたはずの、主に管理職層の人間が、徐々に不満を漏らし始めた。狭められた権利を取り戻そうと、整理された規範を歪めて横暴に振る舞い、それに伴って今度は一般社員の不満が噴出し始める。

 改革案が通って以来、一応は機能していたもののたまに要望が送られてくるくらいだった佐倉目安箱に、目に見えて上司への不満や越権行為の改善要求の声が増え始めた。対応できるものは対処しているものの、圧倒的に介入しようがない問題が多い。どうにもできないという回答を返すたびに、社長室への不信感も増していく。

 ぽつり、ぽつり、と小さなトラブルが現れては、不満と不審を生み出して、それが拡がっていく。社員たちの中に苛立ちや不安が積み重なって、やがて社内全体の空気が不安定なものに変わっていく。それを食い止めようと、私たちは必死だった。